2025大阪・関西万博特設サイトはこちら

Microalgae 藻類

暮らしを変えるのちから

Why Microalgae なぜ藻類なのか

サステイナブルな事業活動が
当たり前となる時代に

現在、120を超える国と地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言している中、SDGs達成に向けた取り組みをはじめ、企業に求められる環境経営の在り方が急激に変化しています。
これまでの、既存の事業活動をフォローする為の環境対策から、事業活動そのものが環境維持への投資となるように変えていかなければならない時代がやってきたのです。

これからの事業活動に
欠かせない
「光合成」

全ての人類が豊かに生きられる持続可能な社会を築く為には、有限な化石資源への依存から脱却し、社会そのものをサステイナブルな構造に変化させなくてはいけません。
その手段として最も有力なのは、唯一のエネルギー源(※)として地球上によどみなく降り注ぐ太陽エネルギーの活用です。

※石油や天然ガスなどの化石燃料は、遥か昔、光合成によって生み出された有機物が何百万年もかけて姿を変えたもの。

人類のエネルギー収支

(単位:ゼータジュール*/年)*10の21乗ジュール

では、私たちはこの太陽エネルギーをどう活用していくべきなのでしょうか?
その方法として近年、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの取り組みに注目が集まっています。しかし、そこからできるのは「電気」のみであり、化石資源のようにプラスチックなどの多様な「物質」をつくることはできません。
これに対して、太陽エネルギーを効率的に蓄えて多様な有機物を生み出し、そこから燃料やプラスチック、食品、化粧品、医薬品などの「物質」を作ることが可能な方法が「光合成」であり、特に藻類による光合成が鍵となるのです。

物質をつくれるのは光合成だけ

藻類が光合成活用の鍵である
3つの理由

01光合成による
物質生産効率が最も高い
陸上植物と比較して、藻類は圧倒的なバイオマス(※)生産効率を誇ります。
  • オイル収量:陸上植物で最もオイル生産効率が高いパーム油と比べて2倍以上
  • たんぱく質収量:現行農業において最大のタンパク質生産性を誇る大豆と比べて16倍以上
このことから、様々な製品の原料となる大量のバイオマスを安定的に社会へ供給していく為に、藻類の活用は欠かせないことが分かります。

※バイオマスとは:動植物由来の有機性の資源(石油などの化石燃料を除く)

オイル収量パームと比べて2倍以上
1ha,1年あたりのタンパク質生産量 大豆と比べて16倍以上
02少量の水で生産できる

藻類の培養には大量の水が必要だと思われることが多いですが、実は農業や畜産よりずっと少ない量で培養することができます。これは、農業では畑へ散布された水のほとんどが地下へ浸透したり蒸発してしまうのに対して、藻類培養では水面からの蒸発のみでロスが最小限となるためです。
有限な淡水資源の利用が社会課題となっている中で、少量の淡水で育つ藻類は、これからの時代を担う環境持続的な事業に活用することができます。

たんぱく質1kgの生産に必要な水分量

03生産に必要な土地を選ばない
藻類は水と光があれば基本的にどこでも培養できることから、砂漠や荒地のような、農業利用が難しい土地や耕作放棄地を有効活用して培養することが可能です。実際に、砂漠地帯や溶岩台地、塩田跡地でも藻類の大規模商業生産が行われています。食糧の安定供給が課題となるこれからの時代に、食糧生産と競合しないという点は非常に重要なメリットと言えます。

農業の土地利用の現状

  • 急速に土壌の劣化が世界で進んでいる
  • 地球の陸地面積に対する耕地の割合は11%

藻類生産による土地利用

  • 水と光さえあれば
    基本的にどこでも培養可能
日本国内(内部)

NEDO戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(2012-2016、IHIらと)にて実施

マレーシア(赤道±5°地域)

設備保有者:Sarawak Biodiversity Centre

乾燥地域
塩害地域

Our Future 藻とつくる未来

太陽の力を元に、光合成によってCO2を吸収しながら育つことから、
サステナブルな社会づくりに貢献する藻。

実は、車や飛行機、船を動かすための燃料
ストローやスプーン、フォークだけでなく、
スマートフォンや衣服、建物にも使われるプラスチック
三大栄養素の1つ、タンパク質
魚や鶏、豚や牛の飼料
更には、サプリメントや化粧品、医薬品に至るまで、私たちの生活を支える様々なモノを藻からつくり出すことができます。

このように、有限な化石資源に頼ることなく様々なモノを生み出せる藻は、環境問題が溢れかえる地球を救い、これからのサステイナブルな社会づくりを支える重要な役割を担います。

藻がこの社会に浸透した先には、環境対策にとらわれることなく、千年先までもっと自由に、もっと豊かに生きられる世界が待っています。
わたしたちは "MATSURI" を通じて、そんな未来を藻と共につくってゆきます。

Road map 藻類生産のロードマップ

MATSURIでは世界初の藻類産業構築に向けて藻類バイオマスの生産規模拡大と用途開発を同時に推進しています。
2018年11月に0.1 ha規模の生産施設を竣工し、2023年4月に5 ha規模の CHITOSE Carbon Capture Central(C4)の稼働をマレーシアにて開始しました。現在、100 haの新施設の構築を進めており、2030年には2,000 ha、2050年には1,000万 ha規模への拡大を計画中です。

Collaborating Institutions 連携する機関

規格・標準化に関しては一般社団法人日本微細藻類技術協会(IMAT)と協力、屋外・大規模培養に関してはSarawak Biodiversity Centreや屋外大規模培養実証プロジェクト(NEDO)と連携しながらMATSURIを推進していきます。

MATSURIプロジェクト連携イメージ図

屋外大規模培養実証プロジェクト(NEDO)

ちとせ研究所がNEDOからの委託により実施する、バイオジェット燃料生産を念頭に置いたプロジェクト。赤道直下の温暖な気候域において、PBR技術および発電所排気ガスを有効利用した大規模な微細藻類バイオマス生産実証を通じて得られたバイオマスサンプルを、「将来的なバイオジェット燃料生産の経済性改善等に貢献する」共同研究等において有効利用する等、MATSURIプロジェクトとも連携していく予定。

(下図):PBR技術および火力発電所排気ガスを利用した世界最大級の藻類培養の実証

一般社団法人日本微細藻類技術協会(IMAT)

微細藻類の研究・開発をより体系化・効率化する上で必要となる各種標準手法・条件の整備、また、標準手法を用いた各種試験より得られるバイオマス生産性、経済性、環境性に関する標準データの取得を可能とするテストベッドの整備が実施される。一部有用情報の共有、標準化に必須となる前提・境界条件に関する協議、産業界・行政への提言等を、MATSURIを含む様々な藻類関連プロジェクトと連携を図って推進していく予定。

(下図)藻類研究開発および産業化に必要な標準・規格の整備、標準試験を可能とするテストベッドの整備
  • モデル藻類種の選定=E培養系確立
  • 3種の基本培養システム
    培養・測定条件の標準化
  • 気候条件の標準化
  • 各種下流工程設備の導入
    手法の標準化

Projectプロジェクト

FEATURESコラム

発起人からのメッセージ

Dr.Takanori Hoshino

Dr.Tomohiro Fujita

ここでの「発起人」とは、本プロジェクト(MATSURI)を発案し、始めた人を指しております。

藤田 朋宏 Ph.D.

ちとせグループ 創業者 兼 CEO東京大学農学部、外資系コンサル企業を経て、ちとせ研究所の経営を皮切りに、日本、マレーシア、シンガポール、ブルネイに複数のバイオベンチャーを設立。それらすべての成長に経営者として携わり、千年後から見た現在という視点で先端のバイオ技術を事業に変え、社会に浸透させる方法を模索している。京都大学特任教授・内閣官房バイオ戦略有識者

藻類産業を立ち上げる取り組みに携わって十数年。ー企業がどうにかできるような話ではないと考えた私はベンチャー企業がよく行う拡大手段とは異なる方法でこの目標に邁進することにしました。

私の方法は、いくつもの大企業に「一緒にやりましょう」と掛け合い、行政に「これは国家で取り組むべき話だ」と掛け合い、国内の有名企業を集めて業界団体を設立・運営するなど、文字通り駆けずり回ることです。大型ベンチャー達が私の予想通り数百億円の資金を集めて結局何もできずに散っていった様子を横目に見ながら、大変ありがたいことに、我々があちこちを駆けずり回る過程で本当に多くの方のご支援を得て、この壮大なプロジェクトを一歩ずつ着実に進めることができました。
今や、世界で最先端の位置に居ると言っても恥ずかしくないところまで来れたと自負しています。

しかし、あちこちを駆けずり回る中で、本格的に藻類産業を立ち上げると言う壮大な目標を実現するためには、以下の3つが足りないということに気づきました。

  • 様々な立場の方の意見を集約したロードマップではなく、計画の遂行にコミットした組織体を明確にした形でロードマップを作ること。
  • 「カスケード利用」や「高付加価値からの実用化」などと肝の座っていないことを言わず、産業構造そのものを最初から作りきってしまうこと。
  • 「バイオ業界の研究者が集まり研究開発を共に行う」のではなく、「産業そのものを構築する」という意志を持った多くの立場の参加者を集めること。

私が、MATSURIというプロジェクトを立ち上げたのは、この3つを一気に進めるための仕組みが必要だと考えたからです。

この考えに賛同してくれた企業と共に、我々が覚悟と情熱を持って藻類産業を立ち上げます。「藻類産業を立ち上げる」という誰も見たことがない大きな山車を担ぎ、全ての産業の中をうねるように山車を引き回す中で、さらに賛同者が集結し、山車も祭もどんどん大きくなる。
そんな情熱的な祭のように我々の覚悟が広まれば、新しい産業を興すという大それた夢もより早く、より大きく実現することでしょう。

私は、この取組みも必ず成功すると確信しているので、これから始まるお祭りが楽しみでなりません。

星野 孝仁 Ph.D.

ちとせ研究所 執行役員 藻類活用本部本部長東京大学農学部卒業。アリゾナ大学にて博士課程修了後、2015年までアリゾナ大学にて上級研究員として微細藻類バイオマス大量生産を目的としたフォトバイオリアクターの開発・研究に携わる。2015年ちとせ研究所に入社、現在は藻類プロジェクトの責任者として事業を牽引している。

1870年頃、ガソリンは産業廃棄物として廃棄されていたそうです。

石油採掘の成功により、1859年にはわずか2,000バレルであった原油生産量が、1869年には4,215,000バレルにまで急激に増加した一方で、その用途がランプ灯の他になかった為だそうです。

ところがその状況は、内燃機関の開発・発達・普及とともに一変します。1900年代の産油量および消費量の増加はご存じの通りです。1929年には、原油生産量および精製油生産量は、1859年の約50万倍に相当する約10億バレルにまで増加しました。

その中で大きな成功を収めたのがスタンダードオイルです。彼らの成功は、急激な需要増を背景に、製油所から始まり、その上流である鉄道(輸送)、集油ラインを統合し、独占したことによると言われています。また、同社はワセリンやチューインガムを始めとする300以上もの石油製品の開発も手掛けたそうです。つまり、多様な用途・市場の開発、プロセスの統合・独占による低コスト化、および参入障壁の確立による利益確保です。

原油を藻類に置き換えてみてください。現状、その生産量は世界全体で約2万トン程度、用途はわずかにサプリメントや化粧品のみ。しかし、人類が持つ技術の中で最も効率的な一次生産において、その大規模化が確立され、大量消費が期待される用途が確立され、さらにはそのサプライチェーンが確立された時、なにが起きうるのかは想像に難くないのではないでしょうか?

夢物語だと嗤うか、祭を楽しむか。それだけのことだと思います。

この祭を私達と一緒につくっていきませんか。